『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』レビュー

アニメ

〜宇宙世紀0105、腐敗と理想の狭間で揺れる青年の物語〜2021年に公開された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(以下、閃ハサ)は、富野由悠季原作の小説を劇場3部作として映像化したシリーズの第1作目にあたります。『逆襲のシャア』から12年後の宇宙世紀0105を舞台に、ブライト・ノアの息子であるハサウェイ・ノアが、反地球連邦政府組織「マフティー」のリーダーとして暗躍する姿を描いた作品です。

映像クオリティはガンダム史上最高クラス

まず最初に言っておきたいのは、映像がとにかく美しいということ。3DCGと手描きアニメの融合が極めて自然で、特に背景美術の緻密さは圧巻です。ダバオの街並みやオーストラリアの植物園シーンなどは、もはや写真と見紛うレベル。空の表現、海の質感、都市の生活感…どれを取っても「これが2020年代のガンダムか」と唸らされます。モビルスーツ戦闘も「地上から見上げる巨大兵器の恐怖」を徹底的に表現しており、従来の宇宙空間バトルとは全く異なる重厚感があります。ペーネロペーとΞガンダムの初陣は、夜間の市街地戦ということもあって暗めではありますが、それが逆に「戦争の現実味」を増幅させていて秀逸。富野作品らしい「兵器は怖いもの」というメッセージが、視覚的に直撃してきます。

富野節全開の会話劇と難解さ

一方で、ストーリー面はかなりハードルが高いです。固有名詞や組織名、過去の因縁がバンバン飛び交い、ガンダム初心者にはついていけないという声が非常に多いのも事実。実際、初見では「何の話してるの?」となるシーンが多々あります。でもそれが逆に魅力でもあるんですよね。富野由悠季らしい回りくどい会話、誰もが正義を語りながらすれ違う構図、理想と現実のギャップに苛まれる人間ドラマが、ぎゅっと詰まっています。ハサウェイ、ギギ・アンダルシア、ケネス・スレッグという3人の視点が交錯しながら、それぞれの「正しさ」が衝突していく様は、非常に現代的で痛快です。特にハサウェイの内面描写は秀逸。
かつてアムロやシャアに憧れ、クェスという少女の死を目の当たりにした少年が、12年後にどう変わってしまったのか。その葛藤と覚悟が丁寧に描かれていて、単なる「テロリストのリーダー」では終わらない深みがあります。

総評:ガンダムファンなら必見、初心者は予習推奨

Filmarksや映画.comでの平均評価は3.8前後と高めで、特にガンダムファンの間では「映像面でようやく現代に追いついた」「富野節がここまで洗練されたのは初めて」と絶賛の声が目立ちます。ただし、以下のような人は注意が必要です:

  • 宇宙世紀シリーズ(特に逆襲のシャア)を全く見ていない → かなり厳しい
  • 明るいロボットアクションを期待 → 戦闘シーンは少ない&暗い
  • ストーリーがスッキリ進む話が好き → 会話が長く、説明が少ない

逆に「戦争とは何か」「正義とは何か」をガチで考えたい人、映像美に酔いたい人、富野作品の重厚な人間ドラマが好きな人には、ここ数年のアニメ映画の中でもトップクラスの1本です。3部作の「起」として、しっかりと世界観とキャラクターの基盤を築き上げた良作。
続編『キルケーの魔女』が公開された今だからこそ、改めて1作目を観返すと新たな発見があるはずです。

オススメ度
ガンダム宇宙世紀ファン:★★★★★(5/5)
アニメ映画として純粋に楽しみたい人:★★★★☆(4/5)
ガンダム初心者:★★★☆☆(3/5)…予習してから挑むべし

閃光のハサウェイ』は、ただのロボットアニメではなく、大人のための政治劇・人間ドラマとして、今なお色褪せない輝きを放っています。
劇場の大画面で観る価値は、間違いなくありますよ。

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